ありがとうヒュー・ジャックマン。年老いた一人の男の物語『Logan / ローガン』
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少し時間が空きましたが、『Logan / ローガン』の感想を。
予告編では今までのX-MENシリーズらしくない、しめっぽい曲が流れる中荒廃した世界、謎の少女、機械の義手を付けた敵が映し出されます。(日本版は変わるかもしれませんが)あまり情報を入れずに観たい人はこれ以降読まないほうが良いです。予告編だけ観て、一体どういうことなんだろうとワクワクしながら観るのも楽しいですし。ただ、そうは言っても内容や評価が気になる人は居ると思いますので、そういった方向けに以下書いていきます。
大雑把に言うと、ダークナイトとは異なる方向性だけど、同じくらいに素晴らしいテイストのアメコミ原作映画です。過去のX-MENシリーズとは単純に比べられません。
あらすじの詳細は書きませんし、核心は避けていますが感想を書くにあたって、この予告編で映し出されていること以外も書いています。予告編が醸す謎を明らかにしないと感想が書きづらいためです。と言っても冒頭以外のことはほとんど書いていませんので、そこまで楽しみが失われるとは思わないのですが。
ウルヴァリンに、チャールズに何があったのか。そして謎の少女とは
本作は死にかかっているウルヴァリンことローガンと、チャールズ・エグゼビア、そして謎の少女ローラを巡る物語になっています。また、ウルヴァリン役のヒュー・ジャックマンが事前に明らかにしているとおり、本作がヒュー・ジャックマンにとって最後のX-MEN映画となる見込みです。断言はせず、示唆しているというレベルのようですが。私もこの情報は観る前に知っていたので、ウルヴァリンがどうなって映画が終わるのかという点を気にしながら観ることになりました。
物語の冒頭、ローガンが何をしているかというと、テキサスでリムジンのドライバーをやっているんですよね。この時点で「何があったんだ!?」と言いたくなるのですが、どうもウルヴァリンの体調が良くなく病院の薬を違法に流してもらって何とか生きていることが分かります。ここでもさらに謎が深まります。ローガンの能力は驚異的な再生能力のはずで、痛みはあっても傷はすぐ回復するはずなのに何かがおかしいぞとなるわけです。
さらにチャールズも登場するのですが、チャールズはなんと認知症を患っています。冷静沈着かつX-MENを指揮していたリーダーが認知症のため、訳の分からない言葉を話したり突然子供言葉になったりするので、やっぱり何かおかしいぞと思うんです。新たなミュータントが25年間生まれていないという事実が明らかになって一体この世界に何が起こっているのかという疑問がさらに湧いてきます。
そして謎の少女ローラがウルヴァリンの元に現れるのですが、彼女は何故か武装集団に追われています。これもどうしてなのかと色々な疑問が集まったところで、3人が集結し物語が始まります。アメコミ読んでいる人やマヴカプを遊んでいた人はローラが何者かすぐに分かると思うのですが、それは言わないお約束。
見どころはずばり、ヒュー・ジャックマン
これらの謎がどういう理由なのかを追っていくのと合わせて、本作の見所となるのはローガンの心の動きとヒュー・ジャックマンの演技。スクリーンに映るのは過去作で活躍したウルヴァリンの姿ではなく、年老いたローガンなんですよね。依然ある程度強いとは言え、戦闘でも衰えを隠せないローガン。さらに認知症のチャールズや幼いローラ、さらには物語途中でたまたま知り合った民間人とのやり取り等、戦闘以外のシーンでもローガンが老いた、あるいは丸くなった様子が窺えるんです。
今までのX-MEN映画みたいに能力をフルに使ってVFXで描かれる派手な戦いはありません。しかし、ダークナイトが正義とは何かをそれまでのアメコミ原作映画とは異なるテイストで描いたように、本作では一人のヒーローがどのように老いて引退するのかを今までのシリーズとは異なるタッチで描いています。
ここが評価の別れどころだとは思うのですが、回りくどくしみったれたことをするなという意見もあれば、X-MENという枠を超えて人間を描いた作品だと言うこともできるでしょう。私は後者の意見で、よく出来ているなと思いました。多少ツッコみたくなるシーンもありますし、本来笑うべきではない最後の場面でのアレは笑いましたが。
17年間ありがとう、ヒュー・ジャックマン
それはそうと2000年にブライアン・シンガーのX-MENが公開されてから17年、ヒュー・ジャックマンはウルヴァリン、ローガン役としてほとんどの作品に登場しています。
初期3部作のX-MEN、X-MEN 2、X-MEN:ファイナルディシジョンでは主役として出演し、荒くれ者だったウルヴァリンが最終的にリーダー格としてX-MENをまとめていましたね。映画そのものの出来はあまり良くなかったと記憶していますが、間違いなくヒュー・ジャックマンの出世作になったのがこの3部作でしょう。
その後、ウルヴァリンにフォーカスを当てたウルヴァリン:X-MEN ZERO、ウルヴァリン: SAMURAIが作られました。SAMURAIの方は最後まで観ていない気がします、すいません。ヒュー・ジャックマンが日本でロケしたのが当時話題になっていた記憶があります。これまた作品としてはとても微妙。。。
それから、X-MEN:ファースト・ジェネレーション、X-MEN: フューチャー&パスト、X-MEN:アポカリプスの新三部作にも少し出演。フューチャー&パスト以外ではカメオ出演でチラッと映るだけですが、フューチャー&パストでは大活躍でした。アポカリプスはともかく、他2作はX-MENシリーズでも間違いなく最高傑作でしょう。
そして最後に本作と合計9本のX-MEN作品に登場しました。この間にヴァン・ヘルシングやレ・ミゼラブルにも出演していて、大活躍でしたね。昨年公開のイーグル・ジャンプにも出演。
レミゼも良かったですけど、私の中ではやっぱりヒュー・ジャックマンはウルヴァリンというイメージが強いですね。中学生の時に最初のX-MENを観たもので、ウルヴァリンのかっこよさとヒュー・ジャックマンの凛々しさが強く結びついているんですよね。同世代の人たちだとそういう人が多いんじゃないかなと勝手に想像しています。
そんなヒュー・ジャックマンが演じる最後のウルヴァリンとなるのは寂しさもありますが、有終の美を飾ったと思います。過去作を観た全ての方々にオススメです。