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荒野の七人 2016年版「The Magnificent Seven/マグニフィセント・セブン」を観てきた感想・ネタバレあり

The Magnificent Seven、マグニフィセント・セブン、荒野の七人 2016年版、どのタイトルで呼ぶのが適切か分かりませんが、邦題に「マグニフィセント・セブン」を選んだ配給会社はちょっとどうかと思いますね。

「七人の侍」と「荒野の七人」をリメイクというか原案にした映画なんだから、どっちに寄せるにしても「七人」は最低限残すのが原作への愛だと思いますし、横文字にして喜ぶ層がこの映画のターゲットじゃないだろうと。。。

日本の配給会社がアレなのは今に始まったことじゃないので置いておいて、「七人の侍」と「荒野の七人」の両方へのリスペクトを感じられて映画はとても良くできていました。

全くもって奇をてらった作品ではなく、正面から王道のストーリーを扱っているのに面白いのは原作が時を超えてもなお優れていることの証左でしょうか。いやあ素晴らしい。

以下、ネタバレありのあらすじと感想です。

序盤のあらすじ

1879年、舞台はアメリカの炭鉱町ローズ・クリーク。平和なこの町にある日、実業家のボーグ一味がやってきて、ローズ・クリークを占拠します。住人のマシューは歯向かおうとしますが容赦なく射殺され、妻のエマは悲しみに暮れます。

それからしばらくしてエマは近くの町に来て、ローズ・クリークを救ってくれる人を探していました。そこに居たのがデンゼル・ワシントン演じる、賞金稼ぎのサム。一度は断られますが、ボーグの名を聞きサムは協力を決めます。

そしてサムは戦いの仲間を探します。

中盤のあらすじ(ネタバレあり)

飲んだくれギャンブラーだがピストルの天才ジョシュ、荒ぶるメキシコ人バスケス、老練の狙撃名人ロビショー、鮮やかなナイフ使いのビリー、手斧を使いこなすハンターのジャック・ホーン、弓矢の達人コマンチェ族のレッド・ハーベスト。

それぞれに個性があるこの6人が仲間に加わり、一行はローズ・クリークへと向かいます。

サムとビリーがローズ・クリークに到着するとボーグの手下が続々と現れ囲まれてしまいます。しかし、さらにそれを囲うように残りの5人が物陰から現れ緊張が走ります。その緊張が破れ銃撃戦が始まると7人はあれよあれよとボーグの手下たちを倒します。

手下1人をボーグの元に向かわせ、その話を聞きボーグが部隊を送ってくるだろう1週間後に向けて7人は迎撃の準備を開始します。有志の住民に銃の使い方や戦い方を教えたり、ダイナマイトを用意して罠を作成したりして布陣を整えます。

終盤のあらすじ(オチまであり)

ボーグの部隊が来る前夜、ロビショーは南北戦争の記憶からの恐怖で戦えなくなり町を離れることにします。他のメンバーは町のために戦う意思を示し翌日の襲撃に備えて英気を養うのでした。

そして、ついにやってきたボーグの部隊。7人と住民は果敢に立ち向かい迎え撃ちます。両軍ともに無事では済まない死闘の中、ジャック・ホーンが命を落とします。

7人と住民が一歩も引かない戦いを見せる中、去ったはずのロビショーが戻ってきてボーグが巨大ガトリングガンを持っていることを皆に伝えます。ボーグのガトリングガンが使用されると、圧倒的な破壊力で町を蜂の巣にして住民側に大ダメージを与えます。

これに対抗するため奮起するものの、なかなか歯が立たずロビショーとビリーがやられてしまいます。ジョシュは馬を奪いガトリングガンまでの近くまで行きますがあと一歩のところで撃たれて落馬してしまいます。

何とか這って近づきますが至近距離からも撃たれ体力の限界を迎えたジョシュは最期にタバコを加えます。それを見た敵がジョシュのタバコに火を点けて、最期に吸ったのを見計らって射殺しようとしますが、撃たれるまでもなくジョシュの身体は崩れ落ちてしまいます。

しかし次の瞬間、ジョシュはタバコにもらった火をダイナマイトに移し、自らの身体もろとも爆発しガトリングガンの破壊に成功します。

最後に残されたボーグとサムは対峙しますが、ボーグがサムに勝てるわけもなく、サムはボーグを追い詰めます。そこで明かされたのはサムの母がボーグにレイプされ、サム自身も吊るされた過去とそれ故にサムが怨恨を抱いている事実。

サムに問いただされる中、ボーグは瀕死ながらも反撃しようと隠し持っていた拳銃を握り撃とうするのですが、そこにエマが現れボーグを撃ち殺します。

生き残った3人は町を去り、この戦いで亡くなった4人の墓が町の片隅に作られ、7人の戦いは壮大、Magnificentだったとして語り継がれるのでした。

「七人の侍」「荒野の七人」との登場人物の比較

必ずしも一致しないのですが私見ではキャラクターの対応は以下のとおり。

七人の侍 荒野の七人 マグニフィセント・セブン
勘兵衛 クリス サム
菊千代 チコ ジョシュ、レッド・ハーベスト
勝四郎 チコ
五郎兵衛 ヴィン ロビショー
七郎次 レッド・ハーベスト
平八 ベルナルド ジャック・ホーン
久蔵 ブリット ビリー
なし ハリー ロビショー
なし リー

リーダー勘兵衛とお調子者の菊千代、剣聖の久蔵は役割変わらずですが、他の面々は必ずしも1対1対応ではなく流動的になっていると思いました。原作はあくまで原作なので完璧になぞる必要はありませんしね。

特に今作は恋愛要素が特にないので、ジョシュがチラッとエマを気にするシーンはありましたが、勝四郎ポジションが不要。さらにサムの過去を知っている人が居るとおそらくオチに影響が出るので七郎次の旧知の設定も無しになっている気がします。

変わらない仲間たちの結束

しかし時代背景やあらすじが異なっても変わらないのは、寄せ集められた荒くれ者の戦士たちが、目的を共有し次第に友情を超えた固い絆で結ばれていくという点です。

これが「七人の侍」から続くこの物語の肝なのかなと思いました。行きがかり上、困っている村人たちを助けるというのも義理人情も良いのかもしれません。本作では理由がそうじゃなかったという展開がありますが。

「七人の侍」と「荒野の七人」をもう一度見直して違いやオマージュをよりいっそう見比べたくなりました。公開前に両作品を観ておくとかなり楽しめると思います。

あまり期待していませんでしたが、思わぬ伏兵でとても楽しめました。