ゲインオーバー

MUGA, I am.

多分、道はもう開いていて必要なのは覚悟なのかなと / 『動員の革命』を読んで

動員の革命 - ソーシャルメディアは何を変えたのか (中公新書ラクレ)動員の革命 - ソーシャルメディアは何を変えたのか (中公新書ラクレ)
津田 大介

中央公論新社
売り上げランキング : 204

Amazonで詳しく見る by AZlink

津田大介の『動員の革命』を読んだので感想を。

おおまかな内容

本書の構成要素は章ごとに分けると以下のとおり。

ソーシャルメディア×革命

アラブの春の事例から、ソーシャルメディアは背中を押してくれる機能があり、行動のきっかけ、あるいは先陣を切って行動した人についていく動機の部分に関わってくる点が紹介されています。

ソーシャルメディア×情報発信

ビジネス、街おこし、ジャーナリズムにおけるソーシャルメディアの活用案・事例

ソーシャルメディア×震災

東日本大震災ソーシャルメディアがどのように使われたのか、その課題や今後について。

ソーシャルメディア×未来

新しいマネタイズの手法としてマイクロペイメントやクラウドファンディングという新しい仕組みが生まれているという話。

動員という捉え方

「動員」という言葉がソーシャルメディアの機能・能力として語られるのは、とても新鮮でした。ソーシャルメディアを「双方向でコミュニケーションの取れるメディア」という、何か言っているようで実は何も言っていない言葉で考えてしまいがちだったので。

僕が最初にインターネットに触れたのは中学生になってからなので2000年以降でしょうか。それを振り返ってみると、僕が「動員」に近い印象を持った最初の出来事はマトリックスOFFだったように思います。 2ch PRESENTS MATRIX ASSEMBLE in JAPAN
マトリックス リローデッド』公開後くらいに、劇中のスミスいっぱいシーンを再現しようと、2ちゃんの大規模OFF板を中心に告知があり行われたものです。
それからジョジョ立ちOFFも思い出します。 ジョジョ立ちin渋谷

こうした形での「動員」というのは確かにあったのですが、その方法は2ちゃんのスレやまとめサイトでの書き込みで人を集めるというもので、運営も大変だったでしょうし、参加する人も情報を良くチェックしていなければならなかったはずです。

大規模OFF会という、そもそも「動員」を目的とするものなので、本書で扱っている「動員」とはまた違う意味合いであることも考えると、当時「動員」という現象が起きていたのかどうか怪しいです。

この時代の後には以下のような流れがあったのではないかと。

・インターネットが広く普及した(インターネットを使う世代が広がった) ・インターネットでコミュニケーションを取る意識ができた(初期mixiなどの流行) ・TwitterFacebookなど波及・伝播が容易なプラットフォームが出てきた(いわゆるソーシャルメディアの登場)

こうした流れで基盤が出来上がり本書でいう、背中を押すような「動員」が起きるようになったんだと思います。

例えば東日本大震災後の節電活動「ヤシマ作戦」なんかはTwitterでかなりの「動員」、盛り上がりを見せましたが、同様のことがマトリックスOFFの時代に起きたかというと上に挙げた理由を考えると難しかったように思います。

ほんの10年の間ではありますが、インターネットを取り巻く環境も変わってきて「動員」ということが本当に容易になった。これは個人的な実感としても疑いようがありません。

個人の「動員」

人の背中を後押しするメデイアとしてソーシャルメディアがあり、誰でも利用可能な状態にあるというのが現在の状況だと思います。

その状況下ではどうソーシャルメディアを扱うかということがある意味、死活問題にもなってきます。ソーシャルメディアが後押しするモチベーションや動機は何も良いことだけではなく、悪いものにはさらに悪化する方向に働くからです。

例えば犯罪告白だったりがTwitterであると、それはあっという間に拡散し炎上が起きます。それから、誰かがTwitterで友人・知人の悪口を書いていてそれを他の友人・知人が見たら、その印象は案外深く残るということもあります。

広くオープンに、フラットになる一方で扱い方を間違えるとオープン、フラット故に自分に大きく返ってくるので、ソーシャルメディアに参加することは自分を律すること(まあ、犯罪等を行わないのは当然なのですが)を同時に必要としています。

諸刃の剣の側面もあるソーシャルメディアを使って、自分のアイディアややりたいことを加速、後押しさせることができるようになれば、新しい道が開けるのかなと思いました。

最近だとソーシャルメディアで実現が加速した事例でこんなこともありましたね。 「にゃんこ型のイヤホンジャックパーツが欲しい」旨をTwitterでつぶやいたらなんと商品化へ - GIGAZINE

自分の発言や考えに責任をもつことができるなら、ソーシャルメディアに情報をどんどん開示していけば、可能性が広がる道はもう開いていてそこに進む覚悟があるかないかという程度の問題なんだと思います。

本書の感想からかなり飛躍していますが、ソーシャルメディアやWebにまつわる事柄について知っていることも含めて書いてあるので、色々と読後に考えて書いてしまいました。