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ゲインオーバー

MUGA, I am. 映画のことや英国のこと、加えてゲームやテクノロジーも。気になることを気侭に記していくブログです。

Banksyが憂鬱の国、Dismalandへ行ってまいりました




Dismaland
Banksy(バンクシー)によるアートプロジェクト、Dismaland(ディズマランド)が昨日で終了し、今朝のBBCニュースでも報道されました。跡地は移民の避難所になるということで早くも公式Webサイトのトップ写真が差し替えられています。 http://dismaland.co.uk/

で、実は幸運なことにチケット争奪戦に勝てたので行ってきましたよ。

不条理、理不尽のオンパレード

色々なメディアで話題になりましたし名前やロゴからも明らかですが、ディズニーランドを皮肉ったテーマパークがDismalandです。ディズニーランドのもつ徹底的かつ圧倒的な虚像のユートピア、その幻想をぶち殺す!!的なプロジェクトです。いや、バンクシーはぶち殺す!!とか思ってないですけど。

ディズニーランドのスタッフ、キャストはよく教育されていて来場者を喜ばせようとしてくれます。でもDismalandのスタッフはそうじゃない。こっちが笑えば「No Smile」と言ってくるし、お金を払ってパンフレットを買っているのになかなか渡してくれないし睨んでくる、声小さくて何言ってんだか聞こえない、クイズを出してくるんだけどマニアック過ぎて楽しめない(たしか、保守党の党首で「二つの国民」〜は誰か?という質問で答えが、ベンジャミン・ディズレーリ。世界史好きなら答えられたか)、などなどありとあらゆる方法で理不尽さを味あわせてくれます。

アトラクションも非常にチープで、世界観まで作りこまれたディズニーランドとは正反対です。ただの射的、汚い水に浮いたアヒル釣り、素朴な観覧車などどこでもできるような代物ばかり。曲が流れていて操り人形が置いてあるので踊るのかなと思ったら踊らない、アトラクションやってないなと思ったら担当者が二日酔いという紙が貼ってある(しかも担当者がすぐ側で本当に具合悪そうにしてる)なんてのも。

ただ、徹底しているという点ではディズニーランドもDismalandも一緒なのが面白いところでもあります。皮肉りながらもテーマパークを否定するわけではなく、その枠に落とし込んでいます。これについてはバンクシー自身が、子供が楽しめない家族向けのテーマパークとDismalandについて語っていることからも明らかでしょう。スタッフ、キャストが理不尽になるではなく、サボりながら携帯でもいじってる方が客としては気分が悪くなる気がしますし、ディズニーランドの真の対極にあるのはやる気もスキルもない人のそうした怠惰さに思います。そうした怠惰さではなく、テーマパークとしての体裁は保ちつつ方向性を変えることでディズニーランドの皮肉を表現するのは流石です。

昔読んだ「ディズニーランドという聖地」を思い出しながら、本当にディズニーランドは異常で特殊な世界なんだなと考えてしまいました。

この他にも色々なアーティストの現代アートが展示されているのも楽しめました。ディズニーランドを風刺したものだと、「Disneyland」の看板が崩れ落ちて「Dead」になってる絵や、蛇に食べられた(ミッキーマウスの形状をした)ネズミとか、タトゥーだらけのシンデレラの陶器などが印象に残りました。

Dismalandのもたらした経済効果は20万ポンドにもなるらしい

Dismalandが設置されているのはイングランドの西側、ブリストルからさらに西に行ったWeston-super-mareという街にあります。なんだか強そうな地名ですが、Wikipediaによれば「Weston comes from the Anglo-Saxon for the west tun or settlement; super Mare is Latin for "upon sea”」ということで何かが凄い、スーパーだという意味はないみたいです。

かつてはリゾート地として栄えたそうですが、駅に降り立った瞬間に寂れた温泉地のような、何もない田舎町のような雰囲気を感じました。車も少ないし、お店も少なく、海岸沿いの少し古びたリゾートマンションはその栄光が過去のものだったものを物語っていて何故こんなところに作ったのだろうと思わずには居られません。

さらにDismalandが作られた場所は、そんなかつてのリゾート地の屋外プール場で2000年に閉鎖されたTropicana。トロピカーナって南国かよ。潰れたリゾートの名前と聞けば納得がいく程にダサい名前なわけですが、そこに憂鬱の国であるDismalandが作られた意味を考えるとよく練られているなと思います。

Dismalandの来場者によって交通、宿泊、飲食店などにお金が落ちてそれで5週間で20万ポンド、4,000万円弱の経済効果って素晴らしい額です。冒頭で触れたBBCニュースで市議会議員がバンクシーに対してThank you very much!って言ってましたが、そりゃそうだよなと。

今回のDismaland体験を踏まえた上で、今度ディズニーランドに行ったら何かが変わるのだろうか、それともそんなことないのだろうか。咀嚼しないとな。

ディズニーランドという聖地 (岩波新書)
ディズニーランドという聖地 (岩波新書)