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MUGA, I am.

動物たちが歌う映画『SING シング』。劇中での日本の扱われ方、きゃりーぱみゅぱみゅの歌が気になる

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http://www.imdb.com/title/tt3470600/mediaviewer/rm2392974848

日本では3月17日公開予定の『SING シング』。タイトルのとおりキャラクターたちが歌う映画で、有名ヒット曲が60曲以上使われています。日本の楽曲としてはきゃりーぱみゅぱみゅの『にんじゃりばんばん』『きらきらキラー』(多分あと一曲使われたのですが分からず)も流れます。このきゃりーぱみゅぱみゅの曲に関してはあとで書いています。

楽曲は洋楽中心ですが、好きな人にとっては映画館でこれらの音楽が聞けるまたとない機会でしょう。一部楽曲はほんの少ししか流れず、流れるのはオリジナルではなく声優が歌っているものになりますが。

その声優も豪華で、主人公のバスターはマシュー・マコノヒー、ブタのお母さんロジータはリーズ・ウィザースプーン、ハリネズミのアシュはスカーレット・ヨハンソン、ゴリラのジョニーはタロン・エガートン、ネズミのマイクはセス・マクファーレンというラインナップ。予告編でも彼らの歌声が少し聴けますよ。スカーレット・ヨハンソンのシャウトもタロン・エガートンの甘い歌声は新鮮でした。

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というわけで早速感想を。

ネタバレなしの感想

基本的には子供、ティーン向けの映画でして、子供でもティーンでもなく子供も居ない私の感想ですので、そういった人たちとは違う見方をしているという前提で是非お読みください。

この映画のテーマである歌、特に歌う側の登場人物にとっては夢である人前で歌を歌うことを通じて登場人物が変化、成長する作りになっていて、綺麗にまとまっていると思います。しかし、いささかコンパクトにまとまり過ぎ、率直なところそれぞれの話が浅いです。

ジョニー(ゴリラ) は盗みを働く父親との関係、ロジータ(ブタ) は10人以上の子供を抱える(ブタなので子供が多い)母親としての生活、アシュ(ハリネズミ) は彼氏、彼氏と組んでいる音楽コンビの関係性、ミーナ(ゾウ) は極度のあがり症で緊張してしまう性格、マイク(ネズミ)は金への執着とそれぞれの悩みや問題が歌を通じて変化していきます。

これに加えて主人公バスター(コアラ)は歌わないものの、潰れそうな劇場を抱える彼のドラマもあって、歌も歌った上でこれらのストーリーをそれぞれ深くするのが映画の尺を考えるととても厳しいことは想像に堅くありません。実際、上に書いたキャラクターの話も扱う量には差があってターゲットに合わせて調整しているのですが、それでもまだまだ薄いんですよね。

コンパクトにまとまっているだけマシという言い方もできますし、最低水準は保ちつつまとまっているのでつまらなかったわけではないのですが、終わった後にひょっとして洋楽ヒットメドレー聴かされただけじゃないかと思わなくもなかったです。登場人物たちが夢を追う姿は元気づけられるものもありましたし、本当に悪くなかったんですけどね。限りなく平均点に近いですね。

動物が人間らしい生活を送っている世界という意味では『ズートピア』と一緒ですが、本作ではあくまで設定だけで物語には絡んできません。作ってるプロダクションは『怪盗グルーのミニオン危機一発』(http://amzn.to/2l3KaHd)でおなじみのイルミネーション・エンターテインメントなので子供向けエンタメ映画以上に期待しちゃいけないのかもしれませんね。そう思うとイルミネーションが昨年作った『ペット』はまだ良い映画だった気がします。

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微妙な日本人キャラの立ち位置ときゃりーぱみゅぱみゅの歌

冒頭にも書いたとおりきゃりーぱみゅぱみゅの曲が本作では使用されています。昨年行われたワールドプレミアには本人も赴いたようでその時の記事には次のような記述がありました。

日本が誇るポップカルチャーを世界に発信しつづけるアーティスト、きゃりーぱみゅぱみゅの名曲「にんじゃりばんばん」や「きらきらキラー」が監督たちの目にとまり、本編に収録されることに

なんですが、その割にはあまり良い使われ方をしていません。きゃりーぱみゅぱみゅの曲が使われているということで公開されている次のシーン映像を見れば分かるのですが、主人公のバスター(コアラ)がきゃりーぱみゅぱみゅの歌を歌う日本人キャラ(レッサーパンダたち)に対して「君たちは帰って(Get out here!)」と言うもののガラスの向こうに通じず、口を「No, No」と動かしながらハンドサインでダメだと伝えるのですが、日本人キャラたちはそれを振り付けの指示と思って踊り続けます。

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実はこのシーンの前に、そもそも英語が通じていないというシーンがあります。オーディションで落選するのですが当人たちはそれがよく分かっておらず、もう一度バスターの前で歌ったら帰れと言われるものの、何言われたか分からないので結局帰らずにオーディション合格者に混じって練習を始めて上の動画のシーンにつながります。

なので、悪意の有無はさておき、英語が通じない人々として終始扱われています。そんな彼女たちが歌うのがきゃりーぱみゅぱみゅなんですよね。この用い方に関して監督たちのリスペクトはあるのだろうかと思わずに居られません。

それからオーディションで歌った曲は『きらきらキラー』。実はこれも問題で、むしろこの曲がきゃりーぱみゅぱみゅが選ばれた理由の一つではないかと疑っています。

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イントロできゃりーぱみゅぱみゅが連呼しているのは「LUCK(エルユーシーケー)」なのですが、発音的にFワード、「エフユーシーケー」に聴こえるんですよね。それでもって、オーディションの採点をしているバスターが苦い顔をするというシーンがあります。Youtubeのコメントにもそう聴こえると書いている人が居ます。

ちなみに最終的には日本人キャラたちも退場します。とある事件で合格者に欠員が出るので、バスターが繰り上げようと彼女たちに伝えるのですが、そこでもやっぱり英語が通じません。バスターが辞書を片手に日本語で伝えようとしたら彼女たちを怒らせるようなことを言ってしまい、彼女たちが退場するという展開です。なので最後まで英語が通じず、果てには怒って帰ってしまうという映画のキャラクターとして描かれていて特に見どころがありません。

日本人は全然英語ができず、さらに外国人の下手な日本語には不寛容というのは日本人のことを分かった上で描いているなと思いました。この手の人種ネタがある程度分かる大人ならまだしも、先に書いたとおり子供、ティーン向けの映画なのでこの件がそもそも笑いとして通じているのかが個人的には疑問ですが、間違いなくコメディ要素として日本人キャラが扱われています。

私自身は差別だとは思いませんが、こんな経緯もありますのでこのキャラクターの歌にきゃりーぱみゅぱみゅが選ばれたことが手放しに良いこと、名誉なことだとは全く言えません。きゃりーぱみゅぱみゅが演じるわけではなくあくまで楽曲提供なので、仮に内容をちゃんとチェックしてなかったのだとすると残念ですね。

このあたり日本版だとどうなるんでしょう。そもそも吹き替えだと話が通じない日本人キャラという設定が成り立ちませんが。。。修正が入るのかどうか気になるところです。ピクサー作品みたいに文字変える、他のキャラクターと絡みのないキャスターを置き換える修正とは性質が異なりますのでそのままなのかな。。。

まあ映画の本筋とは関係ない箇所なんですけどね!

あらすじ(結末まで記述あり)

最後にあらすじをネタバレ有りで書いています。

このブログのネタバレの基準はコチラ

バスター(コアラ)は幼い時に劇場に通ったことをきっかけに演劇、劇場にハマり、遂には自分が幼い時に訪れた劇場を所有するにことになる。それから幾年の月日が経ち、劇場の経営は火の車。従業員にも給与を満足に払えない状況が続いていた。この状況を打破するため、バスターは1,000ドルの賞金を出す歌謡オーディションを開催することを決意、早速アシスタントのクローリー(イグアナ)にチラシの印刷を依頼した。しかしクローリーは誤って1,000ドルを100,000ドルと記載したチラシを印刷、さらに扇風機の風という不可抗力によって間違いに気がつく前にチラシをばら撒いてしまう。

チラシは街中に舞い散った。父親たちと盗みを働くジョニー(ゴリラ)、家事に忙しいロジータ(ブタ)、彼氏との音楽コンビが上手くいかないアシュ(ハリネズミ) 、歌を愛するミーナ(ゾウ) 、ストリートミュージシャンをやっているマイク(ネズミ)等の歌が好きな人がそのチラシを手にし、オーディション会場に集まるのだった。

その数は多く、オーディションが終わるのには朝から夕方までかかった。ジョニーは繰り上げ当選、ロジータはガンター(ブタ)とのペアで合格、アシュは彼氏を残して自分だけ合格、ミーナは緊張のあまり歌えず不合格、マイクは順当に合格となった。不合格になったミーナはお爺ちゃんのアドバイスもあり、勇気を振り絞ってもう一度バスターのところへ行く。結果的に、歌い手としてではなくステージ手伝いに任命されることになってしまうミーナが家に帰ると待ち受けていた家族や近所の人たちだった。ステージ手伝いになったと伝えることができず、歌い手に選ばれたと誤解されてしまう。

一方で、オーディションに合格されたメンバーの練習は進む。ロジータは母親として家事と10人以上の子供の世話があるが、それをDIYで全自動にして練習に臨み、パンクロッカーのアシュはバスターが指示するポップな歌に戸惑っていた。ジョニーは父親に盗みの手伝いを指示される傍らでピアノと歌の稽古に励むが、ある日盗みと稽古が重なり稽古を優先させたため、父親が収監される事態となる。マイクは練習もほどほどにクラブに行った際に強面のクマとポーカーで勝負した際にイカサマがバレて恨みを買っていた。

1,000ドルの賞金を100,000ドルと印刷してしまったことに気がついたバスターはお金を工面するべく、かつて劇場のトップ女優だったナナに、ナナの息子で親友のエディーを通じて会いに行く。ナナはスポンサーになることを固辞するものの、バスターの説得の末プレビューを見て判断することになる。

プレビュー当日、事前のトラブルで壊れていた劇場を何とか改修して新しくしたバスターはナナを迎える。プレビューを始めようとしたその時、そこにマイクを捕まえたクマ一行が現れる。マイクがイカサマで盗んだ金を返せとバスターに要求、バスターが歌い手たちに100,000ドルが入っていると嘘をついてた箱を壊す。しかしその中には到底100,000ドルの価値があるものは入っていなかった。

これにはクマ一行だけでなく、歌い手たちも驚きバスターに詰め寄る。バスターが言い分けに窮していると、改修して水槽のようになっていた床と壁のガラスが割れ劇場は水浸しとなる。幸い誰にも怪我はなかったものの、老朽化していた劇場はこれをきっかけに崩壊しプレビューも大失敗に終わる。

劇場があった土地はバスターが借金をしていた銀行の差し押さえられ、バスターの身には何も残らなかった。歌い手たちは他に会場を借りればまだ歌えるとバスターを説得するが、一文無しとなったバスターはやる気も失っていた。歌い手たちもそれぞれもとの生活に戻っていった。

しばらく落ち込んでいたバスターだったが、お金を稼がなければならないとエディー、クローリーとともに洗車スタンドを始める。ある時、洗車中にどこからともなく歌声が聞こえてくる。その素敵な歌声に導かれたバスターが見つけたのは、劇場の跡地で歌うミーナだった。

ミーナの歌声を聞き再び心に火が付いたバスターは歌い手たちに連絡し、劇場跡地に仮設の会場を組み立てて自分たちのためにショーを開くことにする。それを見に来たのはロジータとミーナの家族くらいであったが、テレビの中継が入るとそれを見た人が次々にやってきて会場は満員となる。ショーは大盛り上がりとなり、それを見ていたナナが劇場跡地を買い取り、劇場は再建されたのだった。