ゲインオーバー

MUGA, I am.

『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』ロンドンの町の灯潤んで揺れる 鉄の女の涙涙の物語

本日公開、ということで観てきましたよ。

あらすじ

政界を引退し、認知症を患っているサッチャーが自身の過去を振り返りつつ、一人の女性として、西欧初の女性首相として生き抜いた様が描かれています。回顧録と言った感じなのであらすじらしいあらすじはありません。Wikipediaサッチャーについて予習してから行ったのですが、ストーリーを楽しむ映画ではないのでネタバレということもなく、時系列や情勢が理解しやすくなって良いです。こうした政治を取り巻く話よりもサッチャー個人にフォーカスを当てているので、もちろん政治のことは抜きにしても十分映画として楽しめるのですが。 マーガレット・サッチャー - Wikipedia フォークランド紛争 - Wikipedia Brighton hotel bombing - Wikipedia, the free encyclopedia ロンドン同時爆破事件 - Wikipedia

感想

若干のネタバレを含みます。 冒頭のシーンでサッチャー認知症を端的に示すところは多少コミカルでもありつつ、観ていてハッとさせられる良い場面でした。この他にも今回観ていて分かりやすい、丁寧なシーンが多々ありました。政治家の集会で足元だけを映して黒い革靴の中一人だけ白と黒のヒールの人が居るシーン、俯瞰ショットで周りの服が黒の中サッチャーの服だけ青であるシーンでは男だらけの政治の世界に飛び込んだサッチャーを非常に分かりやすく説明してくれたように思います。過去を振り返るときに昔のビデオが巻き戻しで延々映されたり、頻繁に登場する幻覚の夫が画面に居るシーンは基本的に暗く光の当て方がいかにも幻想のようだったりと挙げるとキリがないのですが、視覚的にも届いてきて観やすかったですね。

疑問だったのは、若い時に「お皿を洗うだけで一生を終えるのはイヤ」というようなことを言っていたサッチャーが、夫の死を受け入れて一歩前進した後の場面で自分でお皿を洗うのですが、若い時に嫌だと決めつけていたことも歳を重ねると嫌にならなくなるというポジティブなことなのか、結局嫌だと思っていたことも受け入れてしまうことになるというネガティブなことなのか、ラストカットが妙にどんよりしていたのでハッキリと分かりませんでした。前者だと、夫の死を受け入れた成長の末にかつての考えも改めるとつながることはつながるのですが、そんな単純でいいの?と邪推してしまいます。

それと、夫が好きという描写が少なくてびっくりしました。若い時の話はいいですが、その後特に政治家として活躍し始めてから支えとなったようなエピソードがありません。それなのに夫のことを愛している風なので、「女性なら当然夫を愛している」的な常識が根底に流れているような気がして率直に不気味さを覚えました。政治家として、女性としての二面性を描くならもうちょっと描写が必要だったのではないかなあと思ってしまいますよ。え、そんなの結婚すれば分かるって?

描いているテーマは個人の公私の対立・葛藤、その先の成長と決して厚くないのですが、誰もが悩みうる問題なので特に結婚している人なんかはパートナーや家族と自己の対立・葛藤も含めて感情移入しやすいのではないでしょうか。観ていて分かりやすいですし。認知症から政治家としての鉄の女まで、メリル・ストリープの演技は本当に幅があるなあと感心してしまいそれだけでも楽しめる映画です。ただ、僕はメリル・ストリープがどうも苦手です。

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