瞑想本を読んだけど、著者が残念で瞑想どころではなかった
自分を変える気づきの瞑想法【第3版】: ブッダが教える実践ヴィパッサナー瞑想[Kindle版]
- 作者:アルボムッレ・スマナサーラ
- 出版社:サンガ
- 発売日: 2015-07-09
筋トレをすれば肉体が鍛えられるのと同様に、瞑想を行うことで心を強くすることができるというのが本書の主張で、そのための瞑想法を紹介した本になります。
なんですが、瞑想法は正しいとしても、著者の考えがとっても残念でした。この人は信用できないなというのが感想です。以下、瞑想法のまとめと残念な感想を。
2つの瞑想法
この本で紹介されている瞑想法は、「ヴィパッサナー瞑想」と「慈悲の瞑想」の2つです。「慈悲の瞑想」は心を穏やかにするための瞑想で、「ヴィパッサナー瞑想」を行う前段階として紹介されていて、サマタ瞑想の1つ。
慈悲の瞑想
心の中で、以下の言葉を唱える。
私は幸せでありますように 私の悩み苦しみがなくなりますように 私の願いごとが叶えられますように 私に悟りの光が現れますように 私は幸せでありますように(3回) 私の親しい人々が幸せでありますように 私の親しい人々の悩み苦しみがなくなりますように 私の親しい人々の願いごとが叶えられますように 私の親しい人々にも悟りの光が現れますように 私の親しい人々が幸せでありますように(3回) 生きとし生けるものが幸せでありますように 生きとし生けるものの悩み苦しみがなくなりますように 生きとし生けるものの願いごとが叶えられますように 生きとし生けるものにも悟りの光が現れますように 生きとし生けるものが幸せでありますように(3回) 私の嫌いな人々も幸せでありますように 私の嫌いな人々の悩み苦しみがなくなりますように 私の嫌いな人々の願いごとが叶えられますように 私の嫌いな人々にも悟りの光が現れますように 私を嫌っている人々も幸せでありますように 私を嫌っている人々の悩み苦しみがなくなりますように 私を嫌っている人々の願いごとが叶えられますように 私を嫌っている人々にも悟りの光が現れますように
ヴィパッサナー瞑想
今起こっていること、現在に注意を払い観察し思考を止めるための瞑想法。「ストップモーション」「身体の感覚を感じる」「ノンストップの実況中継」「スローモーション」「背筋を伸ばす」の5つのポイントを押さえて、瞑想を行っていきます。紹介されている4つの種類は次のとおり。
・歩く瞑想 ・食事の瞑想 ・立つ瞑想 ・座る瞑想
立つ瞑想では、ゆっくりと身体を動かしながら起き上がりつつ、自分の身体の動きを脳内で実況中継していきます。「右手上がる。右手上がる。」といった具合です。
その他も基本的に一緒で、何か動作をしながら、あるいは何もしない状態で、自身の身体や感覚に集中して実況中継していくことになります。
個人的に、難易度は下に行くほど難しくなると感じました。
文章から垣間見える著者の考えがとても残念
本書の瞑想法以外の記述箇所は、筆者の考えがエセ科学的だったり人種差別的だったりして残念です。例えば、細菌に関して以下のような記載があります。
正しく生きていれば、抗生物質を飲む必要はまったくありません。身体の中にいる細菌たちは、お互いに協力し合って実にうまくいくのです。
抗生物質を飲むのは、正しく生きているかどうかの問題ではなくて、風邪だとかの感染症を治すにあたり効果があるからであって。。。正しく生きていれば感染症にかからないって話なんでしょうか、これは。この文章に続いく皮膚の話も理解に苦しむレベルです。
たとえば皆さんの皮膚はつやつやとして美しいでしょう。その美しい皮膚を守っているのは誰だと思いますか。微生物なのです。皮膚の上に微生物が棲んでいるから皮膚が元気なのです。試しに何か強力な殺菌剤を毎日皮膚の上に塗ってみてください。皮膚はぜんぶ壊れてしまいます。
常在菌が居るのは確かですし、バリア機能もあるとされていますが、「何か強力な殺菌剤」を使った場合云々というのは、「試しに」っていう話なのか。。。終いには、こんな記述も。
自分の身体の中の細菌でも、差別すると嫌がるのです。攻撃してくるのです。
細菌と対話できるの?さらに、認知症のくだりでは、羊水が腐るレベルの発言もあって笑えないです。
脳に行く血液が汚水なので、脳細胞を洗えないのですね。
こうした偏った医学的な認識に加えて、西洋批判や人種差別的な記述も気になります。
とくに現代、私たちは西洋的な教育を受けて、西洋的な価値観で生きていますから、殺すことは正しいことだと思ってしまっているのです。白人たちは、最初は自分たちだけが優秀な人間だと言っていましたが、それではまずいということになり、人間全体に広げました。そして、人間は大事で他の生命は大事じゃないと、好き勝手に自然破壊したのです。
ここでの「殺すこと」は、この文章の前にある「ゴキブリを殺すこと」だと思いますが、西洋的な価値観によって正しいと思っているわけではないと思うんですけど。。。単純に怖かったり、気持ち悪かったりするからではないでしょうか。
先ほどの抗生物質のくだりでも西洋医学を批判しているのですが、西洋に対して個人的な恨みでもあるんですかね。それから、次の人種差別発言。
たまたまゴキブリの生活習慣と、人間の生活習慣がぶつかっただけです。それは他の生命を殺害するまで悪化させるべき問題ではありません。アフリカに住んでいる黒人の生活習慣と、日本人の生活習慣は違います。たったそれだけの理由でアフリカの黒人の方々を憎む必要はあるのでしょうか。殺す必要はあるのでしょうか。
ゴキブリの話の後に例示として、黒人の話を出すのってどう読んでもゴキブリと黒人を並列に扱って類似させてるわけで、ただの人種差別発言にしか思えません。仏教僧侶として、大丈夫でしょうか。流石にゴーストライターが気づけよ、って思っちゃいます。
そんなわけで、仏教の偉い僧侶であったとしても、こうした物言いをする人は信用できないというのが率直な感想です。瞑想法自体が霞むレベル。
Webサイトでも瞑想法の概要は掴める
という具合に、瞑想法以外の箇所がとってもアレな本書ですが、瞑想法についての概要はWebサイトで読めます。もっと知りたい人、あるいはトンデモな記述が気になる人にだけオススメの本です。 http://www.j-theravada.net/3-jihi.html http://www.j-theravada.net/4-vipassa.html