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宇宙船ロマンス『パッセンジャー / Passenngers』(2017年3月日本公開)のあらすじ・感想

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クリス・プラットとジェニファー・ローレンスが主演の『パッセンジャー / Passenngers』を観てきました。英国では公開初日ということでなかなか賑わっていました。いや、劇場が小さかったから賑わっているように見えたのかもしれません。日本では2017年3月24日公開。

観た率直な感想はですね、「期待はずれ」。と言うのも、予告編だけ観て事前情報を調べなかったので、サスペンス要素のあるSFだと思ってたんです。が、しかし蓋を開けたらSF設定のあるロマンスでした。宇宙船という非日常の空間、予定よりも早くコールドスリープから目覚めた二人のラブロマンス。

これは予想外かつ、その上ラブロマンスとしても面白くもなかったので完全に「期待はずれ」でした。『オデッセイ』とか『ゼロ・グラビティ』みたいなやつを期待するじゃないですか、予告編だけだと。。。

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というわけで、以下あらすじ・感想をネタバレ無し、有りの順で書いています。ネタバレが嫌な方は途中まで、ネタバレOKな人は最後まで読んでみてください。

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ネタバレ無しのあらすじ

地球からホームステッド2という惑星を目指す、超大型移民宇宙船アバロン。5,000人の乗客と260人のクルーを乗せたアバロンは、乗客・クルーが全員コールドスリープしている自動航行中に隕石にぶつかってしまう。その衝撃で船内に故障が発生。ジム・プレストン(クリス・プラット)はコールドスリープから一人だけ目が覚めてしまう。

ホームステッド2の到着までは残り90年のタイミングで自分だけ目が覚めたことに戸惑い、もう一度コールドスリープに入る方法を探したり、クルーが寝ているセキュリティゾーンに入ろうとしたりと、ジムはあらゆることを試す。しかし、どれもうまくいかず事態は進展しなかった。上半身だけ人間型(バーカウンターから上半身しか見えないため)のアンドロイドでバーテンダーのアーサーが話し相手になってくれるが、始めは謳歌していた一人での暮らしも次第に飽きが来る。そして一人のまま一年の月日が流れた。

ネタバレ無しの感想

宇宙船アバロンのデザインや船内の造形は嫌いじゃないんですが、SF設定が全体的に荒いです。「なんで宇宙服を着ないんだ」、「さっきは平気じゃなかったろ」、「そんな都合良く動くか」などなどツッコミには事欠かない程です。このあたり詳しくはネタバレ有りの方の感想で。

それからこの後ピンチを乗り越える展開もあるのですが、『オデッセイ』『ゼロ・グラビティ』みたいに課題に協力して取り組んで解決するようなイベントがなく、非常に場当たり的に進んでしまうんですよね。設定がSFである以上、課題解決も論理的に取り組んで欲しいものですが、そんなことは全くありません。クライマックスもそりゃないだろうという展開。

この映画はSFではなくてSFを拝借したラブロマンスだからいいんだと言われると、「はい、そうですね」としか答えられませんがもうちょっと期待に応えてくれませんかね。。。

ラブロマンスも大概でして、朝食食べてたらいきなりおっ始める、3Dの奥行きを利用するなど、イチャイチャしすぎてて苦笑いです。しょうもない会話シーンでもラブラブな感じをにじみ出すとか、もっとこう色々やり方があると思うんですけど、映し方が非常に直接的。監督の恋愛経験が気になるレベルです。

そんなわけで、SFとしてもラブロマンスとしても出来が悪いクソ映画です。この後の展開もまあヒドいんですが、ここから先はネタバレありなので劇場で観たい人は要注意。

ネタバレ有りのあらすじ

一年が過ぎようとしたころ、コールドスリープのカプセルの中にオーロラ・レーン(ジェニファー・ローレンス)の姿を見つけたジムは、彼女のプロフィールを見て興味を持つ。ジムは葛藤するが、我慢できずにカプセルを操作してオーロラを目覚めさせる。早く起きてしまったことに驚くオーロラに対して、ジムは自分が起こしたとは伝えなかった。

オーロラは早く起きてしまったことに怒り、悲しむがオーロラも次第に状況を受け入れる。ある日、ジムがオーロラをデートに誘い、ついに二人は体を交わした。こうして二人は結ばれ、愛し合いながら船内で共に時間を過ごすようになる。オーロラの目覚めから一年が経った日、ジムはオーロラと記念デートをして指輪を渡そうとする。しかし、アーサーがうっかりオーロラにジムが目覚めさせたことを伝えると、オーロラは激怒。二人の関係は終わる。

オーロラは口を利かない、寝込みを襲って殴り殺そうとするなど、ジムに対して怒りをぶつける。ジムは関係の修復を試みるが、どれも上手く行かない。その一方で宇宙船は日に日に故障やエラーが多くなり、システムが安定して稼働しなくなっていた。しばらくして、クルーの一人で甲板長であるガス(ローレンス・フィッシュバーン)が目覚める。

ガスは二人の置かれた状況を理解し、アバロンを直そうと行動を開始する。しかし、カプセルに不具合があったためガスの体調はとても悪く、程なくして死に至る。ガスが死んだが、アバロンの故障を直さなければならないと二人は協力して原因を捜査する。その結果、リアクターの故障が原因であることが分かった。

リアクターの修理にあたっては、船外からリアクターの排熱弁を操作して排熱する必要があった。船外に出るジムだったが、排熱が成功したと同時に船外へと弾き飛ばされてしまう。何とか宇宙船の方向に身体を戻したジムだったが、宇宙服が破れ絶体絶命。オーロラが間一髪ジムを救出して、医療ポットに入れるが診断結果は死亡であった。

ここでオーロラはガスが使っていたクルー用の裏コマンドを思い出し、あらゆる蘇生手段を試す。その結果ジムは息を吹き返し、二人は無事を喜んだ。その後しばらくしてジムは医療ポットを使えば、コールドスリープが再現できることを発見するが、ポットに入れるのは一人。オーロラに入るように勧めるのだった。

それから88年後、ホームステッド2到着直前に乗客とクルーが目覚めると、船内には緑が広がっていた。オーロラはコールドスリープをせず、ジムと人生を共にしたのだった。

ネタバレ有りの感想

まず、ガスとは何だったのか。途中で目覚めるクルーで、彼のおかげでメインデッキに入れるものの、病気が600個くらいあると診断されてあっさり死にます。彼が成し遂げたことは、「メインデッキに入る」「裏コマンドをオーロラの前で披露する」の2つくらいです。これだけのためにローレンス・フィッシュバーンを使うなんて。。。

「メインデッキに入る」件は故障でID認証が壊れて、ジムのIDでもクルーに匹敵する操作ができるようになればいいだけです。この展開があれば、ゴールドクラス限定のカプチーノを普通クラスのジムが買えないという前半のギャグを、買えるようになったという笑いに持っていけたかもしれないのに。。。

「裏コマンド」の件は、裏コマンド無しで普通に助かればいいだけなんで本当に。どうせ生き返るのは分かってるんで、そこでの無駄な葛藤は要らないですしラブロマンスならいっそキスで目覚めればよかったのではないでしょうか(投げやり)本当に意味ないんですよ、ガス。

それから、ネタバレ無しのところに書いたツッコミ。「なんで宇宙服を着ないんだ」、「さっきは平気じゃなかったろ」。この2つはクライマックス、リアクターの操作室でのシーンです。リアクターの暴走により気温が高いという警告が響く中で、オーロラがレバーを引くシーンが出てきます。

そのレバーが手で触れないくらい熱くなっているという描写があるのですが、オーロラは何故かそのレバーに自分が羽織っていた薄い服を掛けて、最終的にその薄い布の上から素手でレバーを引きます。「さっきは平気じゃなかったろ」と。薄い布どうなってんの。しかもレバーが熱くなるくらいなので、気温も相当高いと予想されるのですが普通にタンクトップのオーロラ。タンクトップなんで、飛んできた破片で思いっきり腕を怪我します。「なんで宇宙服を着ないんだ」と言いたくもなりますよ。リアクター見に行く時点である程度危ないところに行くの分かってるんだからさあ。。。

「そんな都合良く動くか」。これはジムが宇宙船外に飛ばされるものの、物を投げて宇宙船方向に推力を得るというシーン。多分ですが、宇宙空間で思いっきり物を投げると推力が出るというよりも、自分がものすごい勢いで回転するだけだと思うんですよね。そもそも、宇宙船外にはリアクターの排熱というとてつもない力で飛ばされているので、物投げただけでどうにかなるはずもなく。

コールドスリープから一人先に目覚めてしまった主人公という設定は悪くないと思うのですが、これをラブロマンスのネタに使うのはどうなのと思います。サスペンス的に、ジムがオーロラを目覚めさせるシーンも伏せて、実はジムが目覚めさせていたと後で明らかにするとか、他の船員も何人か起きて殺人が起きる密室劇にするとか、色々とやりようがあると思うんですよね。趣味の問題もありますが、でもやっぱりラブロマンスだけは無しです。

というわけで、2016年の劇場鑑賞の締めにふさわしいクソ映画でした。ラブロマンスと知らずSF映画を期待して観に行った自分が悪いんですけど、全くオススメしません!