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正義とは何なのか。『ゼロ・ダーク・サーティ』




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昨日公開の『ゼロ・ダーク・サーティ』を観てきました。

虐待描写が苦手じゃなければ必見です。

あらすじ

2001年9月11日に発生したアメリカ同時多発テロ事件の首謀者とされる国際テロ組織アルカイダの指導者オサマ・ビンラディンは、2011年5月2日に捕縛、暗殺された。911からその日まで、実際にはどんな計画が立てられ、何が行われてきたのか。その鍵を握っていたのは誰だったのか。ビンラディン殺害の裏側に隠された真実が解き明かされる……。 あらすじ 解説 ゼロ・ダーク・サーティ - goo 映画

この映画はCIAがビンラディンを突き止めるまでの物語なのですが、また同時にマヤ自身の変化の物語でもあります。

9.11の後、CIA女性分析官のマヤはビンラディンを捕らえるためにパキスタンに赴任されてから、今までのCIAのやり方だけでなく自身の考えを信じて調査を進め、「アブ・アフメド」という連絡員が鍵を握っていることを突き止めます。

最初赴任してきたときは拷問に対し嫌悪感を示すものの、「アブ・アフメド」を探す中で重要参考人に尋問するときに暴力を使うようになるなど態度が変わります。

CIAの同僚とともにレストランで食事を取っていた際にテロに巻き込まれる、別のテロによってその同僚を失うという事件が起きてからは、復讐という個人的な動機も加わり、マヤの心に変化が生じていきます。

最初は使命だったビンラディン逮捕が、個人的な感情に突き動かされた復讐に変わっていくのです。

なかなかビンラディンを見つけられず焦燥する中で、捕虜に対する虐待が問題視されたりCIAが何年経ってもビンラディンを見つけられないことで世間からの風向きも変わっていきます。

しかし、執念と地道な捜査が実を結び「アブ・アフメド」の場所を特定し、そこにビンラディンも一緒に居ることが分かるのです。

アメリカ万歳という内容ではない

アメリカ視点で、ビンラディン殺害に至るまでをドキュメンタリー調に描いているのでアメリカ万歳な内容かと思っていましたが、そうではありませんでした。

確かに、物語の前半はただひたすらビンラディンを探すCIAの姿が描かれますし、アルカイダのテロで人が死んだニュースが挟まれるのでアメリカ視点です。

しかし、物語の最後、邸宅への突入シーンがナイトビジョンで映されるようになると、臨場感が増し一気に現実を見ているような気分になります。ここの緊迫感凄いです。

そこで映されるのが、射殺されるビンラディンやその側近だけでなく、目の前で夫、親を殺される妻や子どもが泣き喚く姿。

さらには突入したアメリカの部隊は、相手が抵抗していなくても容赦なく射殺していきます。倒れた相手に念のための一発も打ち込みながら。

そして映画の一番最後、ビンラディン殺害の作戦が成功しマヤが軍の飛行機でパキスタンを離れるシーンで終わるのですが、マヤ以外には誰も搭乗者が居ないのです。

乗り込んだ後にどこまで行くのかを聞かれたマヤは何も答えられず、一筋の涙を流します。

9.11以降ビンラディンのために全てを捧げてきて、それが終わった今、マヤに何も残っていないという事実が虚しく響きます。

これはマヤだけの話ではなくて、9.11以降アメリカ全体が対テロ、対ビンラディンの熱をまとっていたものの、ビンラディン殺害に至ったところで事件が終わったところで、何かが良くなったわけではないことも示しているのではないでしょうか。

正義とは何なのか、何を信じて行動すればいいのか、問題提起されているような気がします。

ちょっと長いけれど良い映画でした

尺はもうちょっと短くできなかったのだろうかと思います。

ラストシーンの虚しさを際立たせるため、実際にアメリカが10年もの時間を掛けたことを示すためなんだと、いくらか肯定的に捉えたいのですが、最後の邸宅突入シーンまでが如何せん長いよ!

でも今年観た中ではダントツで一番良かったです。