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早稲田実業 躍進の秘密

早稲田実業 躍進の秘密 (朝日新書) 早稲田実業 躍進の秘密 (朝日新書)
渡邉重範

朝日新聞出版
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10年以上前に中学受験した僕はその当時の男子校の早実しか知りませんが、国分寺にキャンパスを移し共学化してから評価が高まったように感じています。 本書は変化を遂げた早実の歴史と教育の方針について校長の視点から書いています。

感想

本書の半分ほどは早実、早稲田の歴史について書かれていますが、早稲田の学生ではないからかピンと来ない部分も多く、当時の先生についての記述が多々あって先生の人柄などを推し量る部分が多いので、もうちょっと思い出話から離れてくれれば楽しめるのにと率直に思いました。 そうした先生の魅力こそが早実の原動力の一つになっていたのかもしれませんが。 肝心の早実の躍進の秘密ははっきり言ってよく分からず、渡邉重範の教育論ばかりが目につきました。早実の外からの視点を全く欠いているので、慶應や他の大学附属中高一貫校などとの比較があればより一層内容に厚みが出て面白くなったのではないかなと。 国分寺移転、共学化後の早実卒業生が早稲田大学を卒業してこれから活躍してから本当に躍進があったのかどうか検証があることを祈ります。

気になったフレーズ

二分法的発想から自由になる

期待通りにことが進まないと、「社会が悪い」「制度が悪い」「お前が悪い」と全て他者のせいにするか、すべて「自分が悪い」と自虐的になるか、いずれかの「二分法的発想」になってしまう。

なにか問題があった時には「運が悪い」と半ばあきらめ気味に考える(それが気楽さを保ってる点でもあると思うのですけれど)か、自分に原因があるのだと考えてしまいがちなのでこの二分法的発想に捕まっているのかもしれないと思いました。 結果として他者あるいは自分のどちらかが悪いかを考えるのではなく、その過程でどうして悪くなったのかをもっと考えてそっちを記憶していく方が建設的だなと。

教育にはドラマが必要である。

私は教育にはドラマが必要である、と考えている。自立し、自律できる子どもに成長する過程は人それぞれである。ドラマには自己「発見」と「逆転」が必要である。「発見」は無知から知への転換であり、その発見の結果が自己否定になる。そのような自己発見をした結果、「逆転」=自己否定の完遂が生じる(木下順二『“劇的”とは』岩波新書)とすれば、まさに劇的な変化となろう。

日々歩んでいく中でも知らないことを知るときにささやかでも良いから劇的な変化を遂げていきたいものです。