ゲインオーバー

MUGA, I am.

能町みね子『お家賃ですけど』『お話はよく伺っております』

第5回地下クイズ王決定戦。過去の分も全部観てきましたが、地下クイズって何で面白いんでしょうね。地下クイズ自体が今までになくユニークで面白いのに加えて、能町みね子さんが言ってたとおり出演者の本気度の高さと競技性がスポーツに通ずるものがあり奥が深いというのが理由でしょうか。

そんな地下クイズ王に前回に引き続き出演している能町みね子さんが気になり、友人のすすめもあったので著書を2冊ばかり読みました。読んだのはKindleで出ている『お家賃ですけど』と『お話はよく伺っております』。

『お家賃ですけど』

能町みね子さんが暮らしていたアパート、通称加寿子荘での暮らしぶりを綴ったエッセイです。加寿子荘の家主である加寿子さんや他の住人の描写が面白いのですが、ブログのようなテンポや文体で書かれていたのが特徴的でした。と思うのも当然で、個人的なmixi日記を再構成してこの本が作られているからです。この書き方好きだなあ。

吐露される気持ちや本音が気取らない言葉で書かれていて、読みながら刺さる部分がありました。例えば次の箇所。

なんで私はこんなに混乱しているのか、何が問題なのか、よく考えて、今起こっている混乱を処理しなければいけないと、藪を掻き分けてでも問題に整理をつけていかなければいけないと、躍起になり過ぎたらいきなり涙が出た。こんな暖かい光のなかでないてはいけないと思えばそれだけで涙が出た。いくらでも出た。

お世話になったデザイナーの師匠から仕事を辞めると告げられる件での、能町さんの反応なのですが、良いです。時間が記されていないので正確な時系列は不明ですが、この前に能町さんの体調が少し悪くなったことが書かれていて、それに次ぐ仕事上でこんなことが告げられたら当然混乱するだろうなと。20代から30歳へなんなんとする時期に、立て続けに訪れる不意の出来事への反応、涙の描写としてとても好感が持てました。

『お話はよく伺っております』

能町さんが街や電車で盗み聞きした色々な人の色々な話を、聞こえなかった部分は妄想も交えて、面白く切り取った一冊。人の話に注意深くかなり耳を傾けていることからして、人間観察が好きなんだなとよく分かります。こちらも文体がライトでブログでも読んでいるかのようで心地よかったです。うん。

『オカマだけどOLやってます。』、『トロピカル性転換ツアー』という著作もありますが、MtFの人の話を直接聞いたことがあって、何となく本の内容の想像がつくので買うかどうかは悩みどころです。