ゲインオーバー

MUGA, I am. 映画のことや英国のこと、加えてゲームやテクノロジーも。気になることを気侭に記していくブログです。

アーキテクチャの生態系と性体験



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レッシグによるアーキテクチャの概念からWebやP2Pなどを分析し、情報環境を生態系に準えて説明しています。アーキテクチャの概念は以下のように示されています。

1. 任意の行為の可能性を「物理的」に封じてしまうため、ルールや価値観を被規制者の側に内面化させるプロセスを必要としない。 2.その規制(者)の存在を気付かせることなく、被規制者が「無意識』のうちに規制を働きかけることが可能。 / P.20

技術による制約や理由によって知らず知らずのうちに行動が規定されて(しまって)いるという風に考えることは一切なく、自分がさも選択して使いこなしているかのように思っていた私にとっては新しい考えでなるほどと発見、納得することが多かったです。 winnyのキャッシュの仕組みはもはやユーザーがwinnyに使われていると思えるほどによく出来ているし、ニコニコ動画はなるほどYouTubeでは感じることの出来ない盛況感を視覚的に明示することで他のユーザーとの繋がりを自然と感じることが出来ているのだと。 こうしたアーキテクチャの枠組みは情報環境だけではなく既成の制度や実社会、あるいは生活でも用いて考えたい、私にとっては新たな着想でした。

今回この本を読んだのはソシオグラフィ研究会の『アーキテクチャの性体験』という冊子を手に入れたからで、これを読む前に元ネタの本も読まなければなるまいと思ったからです。この冊子には『アーキテクチャの生態系』の著者濱野智史さん本人が出てるっていうんだからすごい。『アーキテクチャの生態系』ではエロサイトなどの話は出てこないけれど、Webを考える上でエロサイトは少なからず通らずには居られないわけで『〜の生態系』の補完的な役割を担っているのは疑いようもありません。 学生各人の自慰に対する熱意が文章から伝わってくる部分も多々あり、読み物として非常に面白かったです。

P2Pやってるときに思ったけど、結局AVってさ、分節化された自分の趣味に合致したものを検索で見つけるしかないんだけど、そこには包括的な批評ってものがないわけよ。ジャンルとレーベルと女優名みたいなメタデータしか手がかりのない、ほんとうにデータベースのみの世界(笑) / P.014

アーキテクチャに結びつけて考えると、「分節化された自分の趣味に合致したものを検索で見つけるしかない」というところがエロのアーキテクチャなんですかね。その趣味が何なのか、好きな女優が誰なのかにもよると思うのですが、その趣味に沿ったプレイをすることや好きな女優のような彼女ないしセフレを作ることへは気持ちが向かわないように出来ているような気がします。 性的趣味があるならば、自分の趣味に合った性行為を求める向きに行ってもいいようなものですが、往々にしてその趣味が特殊で現実問題なかなか無理なことも多かったり機会費用も含めた上でのコストがインターネットで閲覧することとは比べ物にならないほど高いのが原因で、ほとんどそうなりません。マニアックに細分された性的趣味やおおよそ全てを見ることは出来ないだろう膨大なエロが溢れていて尚且つほとんどタダに近い。インターネットでの自慰行為で充足させるアーキテクチャがそこにはあるかもしれません。 このあたりは性行為と自慰行為の間にある超えられない壁のような気がするので、学生の中にどちらも大好きという人が居たら話が更に盛り上がったかもしれません。ストリップに行くという人は居たけど、風俗に行く人や彼女とお盛んな人は居なかったのかな。

何にせよ、大変面白く読めたので次のソシオグラフィ研究会の冊子企画に期待しつつ是非読みたいものです。

[caption id="" align="alignnone" width="288" caption="アーキテクチャの性体験"]アーキテクチャの性体験[/caption]