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ゲインオーバー

MUGA, I am. 映画のことや英国のこと、加えてゲームやテクノロジーも。気になることを気侭に記していくブログです。

2016年最高の映画かな?エイリアンの言葉を翻訳する言語学者の物語。『Arrival(邦題:メッセージ)』

映画


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エイミー・アダムス主演の『Arrival 邦題:メッセージ』を観てきました。結論から言うと最高です。

SF映画というくくりで言うと、『インターステラー [Blu-ray]』と同じくらい良かったです。と言えば、本作のすごさが少し分かっていただけるのではないかと思います。

どちらにも共通して言えるのは、科学的な考察がきちんとなされている(箇所がある)、エンタメSFではなく人間ドラマに主眼を置いている、主演の演技が際立っているといったあたりでしょうか。

ブロックバスター物のSF映画だと、地球に攻めてきたエイリアンと戦って勝利するみたいなものが多い中で、こういったしっかりとしたSFを作ってくれるのはありがたいです。『インデペンデンス・デイ:リサージェンス (字幕版)』が悪いとは言いませんよ。全然面白くないけど。

強いて悪い点を挙げるとすると、ブロックバスター物みたいに盛り上がるストーリーラインではない点。エイリアンとの戦いを期待してくる子供は全く楽しめないのでしょう。それから、エイリアンの言葉の翻訳に興味深さを感じられない人には、えらく退屈な映画になると思います。

インターステラー [Blu-ray]』の場合はまだ映像的な見応えがあったと思うのですが、本作はそれも控えめなので、万人受けは難しい映画かなと思います。最高なんですけどね。

それから、あくまでエイリアンの言語と英語の翻訳になので、日本語字幕の時にどこまでその良さが伝わるのかは未知数だと思います。字幕翻訳家の人も本作は大変なんじゃないかと勝手に心配になります。どこに字幕付けるんだっていうシーンもあります。

ちなみに本作の原案は『あなたの人生の物語』。

というわけで以下感想です。あらすじ部分ではネタバレもしていますが、感想部分は控えましたので、ネタバレが嫌な方は下の目次から『コミュニケーションについて考えさせられる』まで飛んでください。

導入部分のあらすじ(ネタバレなし)

世界各地に突如として出現した謎の物体「シェル」。本作の主人公、言語学者のルイーズは大学で授業を行っている時にその出現を知ることになります。

そんなルイーズが研究室でニュースを見ているところに軍の関係者が現れ、彼女を「シェル」の対策チームに翻訳者として誘います。

悩んだ末、ルイーズはこれに応じます。軍の関係者とともにシェルの出現したモンタナへと向かう途中で、同じく対策チームに招集された物理学者のイアンと出会うのでした。

中盤のあらすじ(ネタバレあり)

ルイーズとイアンが「シェル」の中に入ると、そこは重力がねじ曲がった空間で「シェル」は人知を超えたものだと2人は知ることになります。

その空間を進んでいくと現れたのがイカのような姿をしたエイリアン2体。後にアボットとコステロと名付けられるこの2体とコミュニケーションを図るルイーズですが、エイリアンの言葉が分からないため会話にならず初回の接触は打ち切りとなります。

次の接触の時にアボットとコステロが字(エイリアンの言葉)を書けることが分かると、それを翻訳するためにルイーズとイアンは何度もエイリアンと接触して糸口を探っていくのでした。

エイリアンの書く文字はとても複雑で、一意には訳すことができません。しかし、ルイーズは亡くした娘との会話を思い出す中で、翻訳の糸口となるきっかけを見つけます。その結果、ある程度の意味であれば理解しコミュニケーションが取れるように。

こうして翻訳が進んだところで、ルイーズはエイリアンに地球に来た目的を尋ねます。その答えは「use weapon」。武器を使う、すなわち攻撃するという意図に取れるこの言葉にルイーズは困惑します。

しかし、軍関係者は抗戦する必要があるとして「シェル」に攻撃する構えを見せます。アメリカ同様に世界各国でも翻訳が進んでいき、中国は武力攻撃を宣言する事態になりました。

終盤のあらすじ(オチもネタバレ)

この状況にもかかわらず、ルイーズとイアンは「weapon」は例えば「tool」のように武器とは異なる意味で用いられたと考え、再度アボットとコステロに接触します。

ルイーズがコステロに彼らの字を書く方法を教えてもらう最中、軍人が仕掛けた爆弾が爆発。アボットとコステロがルイーズとイアンを爆発の直前に、「シェル」の外へと吹き飛ばしたことで、2人は事なきを得ます。

ベースキャンプで目が覚めたルイーズとイアンは、爆発直前にアボットとコステロが記したメッセージの解読を試ることに。その結果、そのメッセージは時間に関する何かしらの意味があることが分かります。

軍による攻撃が始まろうとする中で、ルイーズは再び「シェル」の中に入りコステロと再会。アボットは先ほどの爆発で死にそうであると伝えられたルイーズは、亡くした自分の娘のことを思い出します。

コステロがルイーズに伝えたのは衝撃の事実でした。ルイーズは未来を見ることができる、と。この映画の中で何度も登場する娘のフラッシュバックシーンは全て、未来の出来事だったのです。

ルイーズはベースキャンプに戻ると、将来エイリアンが去った後の記念パーティーで中国の軍幹部から「シェル」を破壊するのを止めたことを感謝される場面が頭に浮かんできます。

未来の出来事のビジョンを元に、ベースキャンプから中国の軍幹部に連絡を試み、その未来のパーティーで伝えられたことを思い出しながら、現在の軍幹部にメッセージを伝えるのでした。

それを聞いた中国は攻撃を中止。中国の「シェル」は消え、続いて世界各地の「シェル」も空に消えていくのでした。

そしてルイーズの未来のイメージの中で、娘の父親はイアンであることが明らかになり終幕。

注意:この上ネタバレあり

感想部分を読んだ人が間違えてネタバレを読まないようにちょっと間を空けておきます。

あなたの人生の物語

あなたの人生の物語

注意:この上ネタバレあり

Arrival

Arrival

コミュニケーションについて考えさせられる

エイリアンとコンタクトする時に、言語学者を連れてきてエイリアンの言語解読を試みるという現実的な設定にリアリティを感じました。アニメだと都合よく地球の言語話せたり、やたらと便利な翻訳機があったりしますが、本作はそんなことありません。

ホワイトボードを持つ、実際に手振り身振りで説明するのを見ると、かつて未開の地の言語を翻訳する時もきっとこのようにトライアンドエラーを繰り返しながら、先人が努力して言語の壁は乗り越えられてきたのかなと、そんなことにも思いを馳せました。

そして同時に、そうした努力が実を結ばず戦いに繋がった歴史もきっと多くあるのだろうと感じました。

思い出したのは『伝説巨神イデオン Blu-ray BOX』。イデオンでは冒頭で、地球人とバッフ・クランという異星人が接触した時に、降参しようと地球人が白旗を上げるんですよね。ですが、その白旗はバッフ・クランにとっては「殲滅する」と宣戦布告を意味するもので、そのミスコミュニケーションから悲惨な戦いが始まってしまうんです。

こういったコミュニケーションの違い、手違いによって悲劇が始まることは、エイリアンだけではなく当然人間同士、国や人種が違えば当然起きうることだよなあと強く感じました。

ちょうどアメリカ合衆国でもトランプの大統領当選でヘイトクライムが巻き起こっているのは、コミュニケーションの問題が原因の根本にあって、お互いの誤解を埋められるように真摯に対話する必要があるんだろうなと考えてしまいました。

現実世界の話は映画のようにはいかないでしょうけど、コミュニケーションという観点から、こんなことも含めて様々なことを考えさせられる内容でした。

というわけで、対エイリアンと言うよりも、コミュニケーションそのものに焦点があたってるのが本作最大の魅力かなと感じています。

エイリアンの書く、筆で丸を書いたみたいな文字の細かい出っ張りや払いで意味が変わっていて、様々なパターンを収集・分析して共通点や相違点をあぶり出しながら意味を読み解く言語学者もすごくて、好奇心をくすぐられるんですけどね。

徐々に分かり合っていく過程はドキュメンタリーを見た感覚に近いものがありました。

観ない理由はないと思います

コミュニケーション以外の部分で、ルイーズのドラマもとても良かったです。考えさせられました。語るとネタバレに足を突っ込んでしまうので、触れない程度に。

映画の中で直接描写されないんですけど、あることが分かった時点でよくよく考えると、これを思いながらそうするのかと想像してしまいグッと来るんですよね。

ちょっと何書いているか意味分かりませんが、確信に迫る部分でネタバレ避けるとこのように指示語だらけになるので諦めて、キャストと監督紹介を。。。

ルイーズ役のエイミー・アダムスの演技が良くて、各所で見せる立ち振舞に悲しさと切なさが共存していて、思わず唸るものがあるんですよね。翻訳で疲れたあたりの顔もグッドでした。

イアン役のジェレミー・レナーには特に感想ないんですけど、アベンジャーズ脳のせいでホーク・アイに変換されてしまうことが時折ありました。私が悪いんですけど。

監督のドゥニ・ヴィルヌーヴは過去に『ボーダーライン(字幕版)』、『プリズナーズ [Blu-ray]』、『複製された男 (字幕版)』も監督しています。未鑑賞なのでこれから観たいなと思います。さらに現在製作中の『Blade Runner 2049』も監督しているということで、引き続き活躍が期待されそうです。

日本公開は2017年5月という、まさかの半年後ですが間違いなくヒット作になることでしょう。ブロックバスター物のSFじゃないと退屈だという方以外はきっと楽しめると思います。

公開まで半年もありますので気になる方は原作小説の『あなたの人生の物語』を是非。ちなみに、これは『トップをねらえ2! Blu-ray Box』の最終話のタイトルだったりします。